不思議の国の軟体鉱物

2012-02

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『Respective Tribute』 第8章「女王」 Part1

 前→第7章「嘘」 Part14

 最初に会ったとき、私はその人をお姉さんだと思った。自分とそっくりな長い金髪、顔もどことなく似ている様な気がして。それなのに、自分よりもとてもしっかりしていて、大人びていて。
 間違いないわ、この人は私のお姉さんなのよ。私もいつか、この人みたいになるの。なんて、そんなことを思ってた。
 最初は、そう、憧れだったわ。

 その日、私はバールのようなものを振るっていた。あの人がとても強いと聞いて、あの人みたいになりたくて。一生懸命、戦いをイメージしながらバールのようなものを振り回していた。
 そうしたら、あの人が微笑みながらやって来た。熱心だな、って。そう言ってくれた。
 私はお願いした。強くなりたいから、戦いを教えて欲しいって。その人は頷いてくれた。私は嬉しくなって、はしゃいで。全力で行くわ、そんなことを言ったと思う。
 そうしたら、その人は言った。それならこちらも対等に行く、そんなことを。
 そして次の瞬間には、私は痛みに泣いていた。
 両手首、両足首から涙のように血が溢れていて、殴られたお腹と胸はとても痛くて、苦しくて。死にそうな、本当に死にそうな気分がして。殺されちゃう、そう思って、すごく怖かった。
 そんな私を、その人は微笑んで見ていた。痛みは君を強くする、笑いながらそう言っていた。
 そこから先は覚えていない。だけど、次に目が覚めた時には3年も経っていた。
 目覚めた後の私は、姉だと思いこんでいたその人のことが苦手になった。みんながその人を呼ぶ時の言葉で、私もその人を呼ぶようになって。
 『女王』――恐れを込めた名前。
 抱いたのは、そう、恐れだったわ。
 
 ある日、私はその人に頼み事をした。『女王』に、畏れ多くも『女王』に。
 『構造体』の中の本や映像を見て、私はその本物に触れたくなっていて。どうしても、外の世界にある色んなものに会いたくて、だから私はお願いをしたわ。
 もしも『構造体』から出れるような日が来たら、一番最初に私を外の世界へ出してと。震えながら、でも勇気を振り絞って私は言ったの。
 そうしたら『女王』は、笑ってこう答えたの。出来る限り、叶えよう。そんなことを。
 私はとても嬉しかった。怖くて仕方なかった『女王』が、微笑んで約束してくれたことが。もし本当に叶えてくれるのなら、昔のような憧れを、敬意を、私は示せると思った。
 期待、そう、期待してたわ。

 そして、約束の日。『女王』は誰よりも早く外の世界へと旅立った。私との約束を守ること無く、自分だけ。それでも、私は我慢することが出来た。
 『女王』は『構造体』の外へ出る前、微笑みながら言ってくれた。帰ってくるまで、君が私の代わりをしていてくれって。その言葉は、『女王』が城主として支配しているこの『構造体』を私に預けるということ。
 外に出れなかったことは残念だったけど、私は満足だったわ。認められたこと、あの人の代わりとして、あの人に並べたこと。そして、『構造体』にある全てを手に入れたこと。『女王』にありがとうって言いたくなるくらい、私は喜んでいた。
 感謝、そう、感謝してしまったの。

 だけど、それは間違いだった。

 私は、『女王』に並んでなんていなかった。私が出来たことは、ただ玉座に座って、何も無い日々を過ごして、何一つ決める権利も無くて、何も出来ない飾りとして座っているだけで。
 外に出たい、そんな願いすら聞き入れられないまま。何日も、何日も、何日も……!
 私は伝えた。外にいる『女王』に対して、外の世界に出してくれるように。だけど帰ってきた答えは、少し待て、それだけだった。
 もう、分かっていたの。自分は身代わりなのだと。玉座を空席にしないための、身代わりにされたのだと。
 私は怒った。とても怒ったわ。『女王』に期待した自分が馬鹿だったと、そう怒った。
 怒り、そう、怒りだったわ。

 私は、私に許されていた言葉を『機関長』に突きつけた。『構造体』の機能全てを管理する、その男に。
 私は言った。『女王』の代わりなんて辞めると。そして、この『構造体』を出ると。
 彼は言った。辞める権利はあっても、外の世界に出る権利が君には無い、と。だけど、こうも言ってくれた。自分にも止める権利は無い、って。
 そして機関長は、ローエングリンを呼んでくれた。外の世界への案内役を、彼は用意してくれた。そうして私は外の世界へと旅立つことが出来た。そんな権利はどこにも無かったかも知れないけど、私はそれを望んでいたの。
 夢を、叶えたかった。
 『女王』への怒りをそのままに、私は夢にまで見た世界を巡った。その旅の中で、『女王』なんてどうでもよく思えて来たの。
 世界で一番嫌いなだけの、ただそれだけの人。いつか倒すなんてことを言っておきながら、それを想像で済ませて満足していた。『女王』なんて、そんなものになっていた。
 そんなもの、そう、そんなものだったわ。

 だけど今は――

 次→「女王」 Part2

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