不思議の国の軟体鉱物

2017-07

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『Respective Tribute』 第2章「夜空にて」 Part2

 前→第2章「夜空にて」 Part1

 高層化している街の上空で、アリスは目当ての人物がいないか探す。上下左右前後。いくら首を回しても、空には彼女、1人だけ。
 アリスは身体の前面を地面と向かい合わせ、飛んだ。進行方向は頭の先。引力のように全身に加速度が加わっている。それとは別に髪とスカートにも押さえるような力を発生させていたから、彼女はそれらの乱れを気にする事無く飛ぶことが出来る。
 下を見て、上を見て、前を見て。時速30km程度のスピードで当てずっぽうに飛び回り探し回り、そして1時間が経過した。魔力を使うための集中が、アリスを疲労させていた。
「どこにもいないわ」
 ビルの屋上、大の字に寝そべりながら彼女は呟く。周囲のビルよりも背丈のあるそのビルからは、僅かに星の光が見えた。地上からでは街の明かりで掻き消される光。アリスはぼんやりと見つめる。
 『構造体』には星空は無かった。果ての無い空の先、途方も無いほど遠くにある星。それは一体、なんなのだろうか。
 驚くべき人間たちの世界があって、その周りには想像も出来ないくらいに不思議な宇宙がある。自分たちももしかしたら、その宇宙の何処かから来たのかも知れない。アリスはそんな空想に耽った。
 その時、不意に星の1つが消える。そして数秒後、再び光り始めた。
 それを目視したアリスは何が起こったのかしばし考え、起き上がった。
「見つけたかもっ!」
 急激な加速度、一気に上空へ。周囲に目を凝らし、アリスは発見する。明かりの消えたビルを背にして、空に浮かぶ者を。
 地上と付近のビルの明かりによって、その者の顔がぼんやりと照らされている。女性。アリスが写真で見た顔。長い物体を手に持ち、それを弄っている。
 アリスはゆっくりと降下し、彼女から少し離れた位置で停止した。
「あれ……?」
 英語でそう呟いた女性が、顔を上げてアリスの方を向く。青と緑の光に照らされていたものの、その短い髪が灰色であることがアリスには分かった。
 間違いない、この人だわ。
「珍しいね。こんな夜中に空の上で魔導士に会うなんて、初めてだよ」
 警戒心は無いのか、女性は親しげに話しかけて来た。
「しかもその格好」
 全身を見定めるような視線に、アリスは自分の服装を改めて見た。水色と白のエプロンドレスにカチューシャ。『構造体』にいた時に着ていた、アリスの正装。『不思議の国のアリス』をモチーフにしているのは明白であった。
「夜空でアリスに会うなんて、夢でも見てるのかな」
 その言葉にアリスは首を傾げた。
「なんで、私の名前を知っているの?」
「え?」 
 女性は笑みを携え、アリスの顔を見つめたまま沈黙した。
「……ああ、もしかしてアナタって、名前もアリスなの」
「そうよ。私はアリス」
「なるほどなるほど。名前までアリスなんだ、格好だけじゃなくて」
 納得した女性は、改めてアリスの全身を確かめる。
「年はいくつ? まだ学生かな?」
「学生じゃないわ。年は17歳。永遠に」
 アリスは何故か自慢げに言ってしまった。それを聞いた女性は目をぱちくりとさせて、そして苦笑した。
「ははっ、変なの。魔導士って変なの多いけど、その中でもぶっち切りだね」
 変だと言われたアリスは口を尖らせ、への字に曲げた。
「貴女だって変よ。すっごく変だわ」
「どの辺りが?」
「髪の毛灰色だったり、夜中に空飛んでるのもそうよ」
「夜中に空飛んでるのはアナタだって同じでしょ。でもまぁ、うん。私も確かに変かも」
 そう言って女性は手に持っている長物を顔の高さまで挙げ、両手で構えた。
「何をしているの?」
「静かに」
 女性に制止されて、アリスは黙った。アリスが見る限り、それは金属製で、細長い円筒が伸びていて、手で握るためのグリップや人差し指で引くためのトリガーなどが付いていた。女性はスコープを覗きながら、息を殺して、遠く離れたビルに向かっている。
 長く、張り詰めた沈黙。その中でアリスは物体の正体について考え、そして結論した。
 もしかして、これって銃……
 その瞬間、物体が大声を上げた。
 
 銃声。
 
 女性は構えていた銃を下ろし、満足げな表情を浮かべた。
「さて、逃げなきゃ。アナタも早くした方が良いよ」
 女性は呆然とするアリスを放って、上空へと飛んで行ってしまった。
 一方のアリスもすぐに銃声のショックから立ち直り、逃げるように自室の方角へと飛行する。しかし、彼女の頭は何が何だか分からないまま、ただただ混乱していた。

 次→「夜空にて」 Part3

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