不思議の国の軟体鉱物

2017-06

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『Respective Tribute』 第3章「再会」 Part2

 前→第3章「再会」 Part1

「えっと、アリス。折角だからちょっと飛行の腕前を見せてよ。私より飛ぶの上手いんでしょ、アナタ」
 笑顔のまま、ホンシアが言った。だが、アリスは見逃さなかった。
 魔導士は集中力が高い。大シンボルであり、人間以上の身体能力を持つアリスなら尚更である。ホンシアの右人差し指がさりげなく銃のトリガーに掛けられたことに、彼女は気付いていた。
「まずはさ、くるっと横に1回転してみて」
 それは、戦闘開始の合図だった。
「えっと……」
 回転すれば、背中も見えてしまう。それは出来ない相談だった。心を決めたアリスは、にこやかに、天使のような愛くるしさを湛えた笑顔でこう謝った。
「ごめんなさい」
 アリスは即座に背中に張り付けていたバールのようなものを頭の上まで加速度で上昇させ、両手で力強く握り、自分の腕力に加速度発生の魔力を加えた豪速の鈍器として振り下ろした。
 視認出来ないほどのスピードで振り下ろされたそれは、アリスの脳内ではただの峰打ちだった。バールのようなものはホンシアの頭部を打ち付け、彼女は頭上に星を回転させながら気を失うはずだった。だがそれはアリスの想像でしか無く、実際は人間の頭部を粉砕するのに充分な威力を持っていた。

 僅かに後退していたホンシアがそれを避けられたのは、幸運と言う他無かった。

「ちょっと、避けちゃダメよ」
 アリスはバールのようなものを振り上げ、構え直しながら言う。構え直したその姿は、バッターボックスに立つ野手のようだった。
「避けちゃ駄目って、避けなきゃ死んでたって!!」
 自分の幸運と直前の恐怖に肝を冷やしたのか、ホンシアの顔からは汗が噴出すように出ていた。
「そうかしら?」
「きっと脳髄をブチ撒けながら、地面に落下してた。アナタにとっては望み通りのことかも知れないけどっ!」
 怒りの表情を露わにするホンシアに対して、アリスは首を傾げる。
「私はただ、貴女を捕まえたいだけだわ。殺しちゃ駄目って、言われてるもの」
「全然っ、そうは見えなかったって!」
「うーん、それじゃあもっと手加減して……頭狙ったのも駄目ね、もっと別の場所を……」
 ブツブツと独り言を言いながら、バールのようなものの握りを調節し始めるアリス。その隙にホンシアがライフルを構え、銃口をアリスに向けた。
 だが、遅すぎた。
 ホンシアが銃口を向けた瞬間、アリスは既にホンシアの右手側、ライフルの銃身のすぐ真横にいた。ホンシアは驚愕の表情を浮かべ、その目がアリスの得物を追ってライフルの下に向かう。
 彼女は見てしまっただろう。アリスの両手で握られたバールのようなものが野球のバットのごとくスイングし、今まさにボールに見立てた何かを打とうとする瞬間を。
 アリスとホンシア、目線の高さはほぼ同じ。アリスにとってのストライクゾーンにあるのは即ち、ホンシアの腹部。速度を抑えているはずの攻撃が、内臓を潰す凶器の運動として命中しようとしていた。
 アリスの僅かな手加減により、ホンシアには理解する時間もあったのだろう。恐怖する時間もあったのだろう。覚悟する時間もあったのだろう。
 だから、助かる時間もあったのだろう。

 ホンシアの腹部を直撃するはずだったバールのようなものが金属音を響かせ、突然その運動を停止した。アリスの持つバールのようなものの先端付近。ホンシアの腹部の左、直角に曲がった爪の側面。そこに第三者の剣身があった。
 ホンシアの直下にいつの間にか現れた、1人の男。切り揃われた黒い髪、薄茶で薄手のロングコート、端正な顔はどことなく、アリスに近い雰囲気を感じさせる。その男の剣が刃先を上に向け、バールのようなものを受け止めていた。
 アリスはバールのようなものに力を込めたまま、男の顔を確認する。そして驚いた表情を一瞬だけして、すぐに苦々しい表情を浮かべた。

 こんなのは何度もあったわ。
 お互いに信頼してたから、何度あろうと大丈夫だった。
 お互いのため、お互いがより強くなるために。
 守るために、叶えるために。
 それでも、こんなのは初めてだわ。
 貴方が私の邪魔をするなんてことは。

「どうして……」
 どうしてなの、ローエングリン――

 次→「再会」 Part3
 
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