不思議の国の軟体鉱物

2017-10

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『Respective Tribute』 第3章「再会」 Part8

 前→「再会」 Part7

 アリスは一瞬、何を言われたか分からなかった。ホンシアが「多分ね」と付け加えた後、やっと言葉が出た。
「それって、それってどういう意味……なの?」
 まだ把握していない様子で、アリスが呟く。
「ローエングリンは、確かにある人の命令で私と一緒に行動してる。でも、その人は『女王』なんて奴じゃなければ、ローエングリンと旧知の仲なんかじゃ全然無い。むしろ私の方がその人と知り合いって言えるかな」
「よく……分からないわ」
 小首を傾げてしまうアリス。ホンシアは「うーん」と小さく唸った。
「つまり、ローエングリンは嘘を吐いてるってわけ。きっと、アナタに嫌われるためにわざとね」
 さらに頭が混乱してしまうアリス。嫌われるために、嘘を吐くですって?
 なんで、どうしてなのかしら。
「全然、まったく分からないわ」
 それが悲しくて、アリスはまた泣いてしまいそうになって、それを見たホンシアが慌て出す。
「あーーっ! えっと、えっとだね。危ないから、そう、危ないから!」
「危ないから……?」
「そう、そういうこと。アナタが私を襲ったように、敵が多いの。だから、アナタを巻き込みたくなかったんだよ、多分」
 アリスの脳がその言葉を理解しようと働き始める。
 奈々子は、ホンシアが人をいっぱい殺したって言っていたわ。だからきっと、ホンシアが嫌いな人はいっぱいいるのよ。それでホンシアと一緒に居るローエングリンも、一緒に狙われる。ローエングリンの近くに居たら、私も狙われるのかしら。そうならないように、ローエングリンは酷いことを言ったのかしら……
 アリスの脳はそう解釈し、自分なりの言葉を発しさせた。
「私が誰かに襲われないように、わざと突き放すようなことを言ったのね」
「そういうこと。賢いじゃん」
 思いがけない言葉に照れてしまうアリス。普段、奈々子に馬鹿扱いされているためか、彼女にはその誉め言葉が妙に恥ずかしかった。
「でも、どうしてローエングリンはその誰かの命令を聞いているの?」
「うーん、それは……」
 言いづらそうにホンシアが口ごもった時、携帯端末への着信を知らす音が鳴った。ホンシアがズボンのポケットから端末を取り出し、確認する。
「あぁ、ゴメン、そろそろ戻らないと行けないみたい」
 ホンシアは飛んできた方角へゆっくりと移動する。
「あと、約束。ちゃんと守ってね」
 アリスはホンシアとの約束を忘れかけていたが、とりあえず頷いた。それを見届けたホンシアは闇夜に飛び去り、アリスはどんな約束をしたかを思い出そうとしながら、その姿を見送る。
 ホンシアの姿が完全に見えなくなった辺りで、アリスはしてしまった約束の内容を思い出した。
 ――不意打ち禁止。
 つまり、不意打ちじゃなければ良いのかしら。でもそれじゃあ逃げられちゃうかも知れないわ。
 約束を破る、ということも頭を過ぎったが、アリスは絶対にしたくなかった。たとえ『女王』の命令じゃなくても、ローエングリンは約束を破ったのだから。同じことをしたくは無かった。
 そして、アリスは思う。『女王』の命令じゃないとしたら、どうしてローエングリンは日本にいるのかしら。ホンシアと一緒に居るのも、何故だか分からないわ。分からないことだらけ。こういうの、やっぱり嫌だわ。
 人間社会は不思議の国だけど、ローエングリンの心は地底の国みたい。何も見えないし、しかも嘘吐き。何か理由があるとしても、私には言って欲しかったわ。
 アリスはまた寂しくなり、涙がこぼれそうになった右まぶたにハンカチを当てる。そしてハンカチを返していなかったことに、彼女は気付いたのだった。

 次→「再会」 Part9

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