不思議の国の軟体鉱物

2017-09

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『Respective Tribute』 第4章「紅霞の向こう」 Part3

 前→「紅霞の向こう」 Part2

 扉の閉まる音と共に、アリスは肩の力を抜いた。
 ついローエングリンの名前を口に出してしまった時、嘘を吐いた事を怒られ、さらには根掘り葉掘り質問攻めに遭うとアリスは思った。だが結局、奈々子は何も聞かなかった。アリスがはぐらかしていると、優しげなため息を吐き、「言いたく無いなら、別にいい」と言い、それ以上の追及をしなかった。
 1人になったアリスはベッドの上に仰向けに寝転がり、気を使ってくれたのかしら、と何となく思う。
 ローエングリンのことは正直、まだ整理が出来ていなかった。アリスはこの3日間、ローエングリンの動機を考えていた。もしホンシアの言うとおり、ローエングリンの行動が『女王』の命令で無いとしたら、何かしら重大な目的があるはずである。だが、2人の人間を殺すことと繋がるような何かに、アリスは思い当たることが出来なかった。
 理解出来ない。そのもどかしさは、自分とローエングリンとの関係も考えさせた。
 今の私にとって、ローエングリンとは何なのかしら。友人、師弟、それとも過去の存在、別の何かかしら。
 アリスは自問自答するも、その答えはやはり、出なかった。
 以前と今で、ローエングリンに対する印象は変わった。でも、どう変わったのかが言い表せない。だからアリスは何一つ整理することが出来なかった。もし奈々子に聞かれたとしても、答えられなかっただろう。自分とローエングリンとの間にある、言葉にしがたい溝。一体どうすれば、それを埋められると言うのか。
 アリスの脳裏にふと、もう1人の存在が思い浮かんだ。ローエングリンと共にいた、ホンシアの姿が。
 たとえローエングリンともう一度会えたとしても、彼は本心を語らないだろう。しかし、ホンシアなら何かを知っているだろうし、話してもくれるはず。会って話すべきなのはローエングリンでは無くて、ホンシアなのだ。
 それに気付いたアリスは起き上がり、時計を見る。時間は夜7時を少し過ぎた辺り。
 3日間、夜中に空を飛び回ってローエングリンを探したが、結局一度として見つけることが出来なかった。それでも、今日は待っているかもしれない。ローエングリンでは無く、あの場所で、あのホンシアが。最初に出会った時と同じように、2度目に会った時と同じように。
 何もしないよりは、少しでも動いた方が良いに決まっているわ。
 アリスはベッドから降りて、玄関に向かう。
 そうだ、その前に何か食べなくちゃ。お腹が空いていては、何も出来ないわ。
 心の中でそう呟きながら。

 次→「紅霞の向こう」 Part4

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