不思議の国の軟体鉱物

2017-05

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『Respective Tribute』 第4章「紅霞の向こう」 Part8

 前→「紅霞の向こう」 Part7

 そして次の日曜日。アリスは試着室の中にいた。
「そろそろ穿いた?」
 カーテン越しにホンシアの声が聞こえ、アリスはもう一度鏡に映った自分を確かめる。
 似合わない……全然似合わない。こんな格好じゃ、恥ずかしくて外も歩けないわ!
「開けるよ」
 そう言ってホンシアが試着室のカーテンを開け放つと、普段の少女趣味とは半回り違う格好のアリスが、両腕で庇うように上半身を隠した。
「はい、両腕をピンと広げて。もっとよく見せて」
 ニヤニヤ笑いのホンシア。恥ずかしげな表情をしつつも、アリスは渋々その言葉に従った。
 上は黒のキャミソール・カットソー。下はローライズのジーンズ。足元には脱いだ服が乱雑に散らかっている。
「試しにと思って適当に選んだけど、それなりに良い感じだね」
 ホンシアはアリスの全身を舐めるように見た後、視線を緩やかなカーブを描く胸部に移した。
「胸以外は」
「うるさいわねっ!」
 先ほどと同じように胸を隠すアリス。どうして、こんな格好をさせられる羽目になったのかしら!
 その日の朝、アリスは約束通りマンションの屋上へと向かった。まだ日曜の喧騒は所々から聞こえるだけで、静かな朝の澄んだ大気が心地良い、そんな朝だった。
 屋上への階段を上り終えた午前10時丁度、ホンシアは既に屋上のフェンスに座って待っていた。そして腕時計を見ながらアリスの姿を確認し、こう言った。
「10時ちょうど。本当に約束は守るんだねぇ」
 まるでアリスを試したかのようなホンシアの一言。アリスは思わずムッとした表情をしてしまった。
 そんな朝の出来事を思い出したアリスは、機嫌を損ねつつあった。1度ならず2度までも遊ばれるように試され、しかも身体的な特徴まで馬鹿にされて。
「こんな恥ずかしい服を着ている人たち、おかしいわ!」
「いい歳して少女趣味な格好をしてんのもおかしいと思うけど。胸が小さいこと以外、スタイルは抜群なんだから。もっと大胆に行った方が良いって」
 またしても胸のことを言われ、アリスは完全に機嫌を損ねた。
「いいの、私は可愛い服が好きなんだから!」
 へそを曲げたアリスは、カーテンを思いっきり閉める。危うく、試着室の壁ごとカーテンを破壊しそうになった。

 2店目、3店目、4店目……アリスに数えられたのはそこまでだった。
 数え切れないほどの店をホンシアと回ったアリス。やっと座れたオープンカフェの椅子から店内の時計を見ると、時刻は3時過ぎ。陽射しはビルに遮られ、雑踏はその向こうの車道が見えないほどに休日的であった。
「ふぅ……」
 アリスの一息。だらりと全身の力を抜いて、彼女は椅子にもたれる。ホンシアはその姿に、勝者のような微笑みを見せた。
「どう、疲れた?」
 ホンシアの椅子の左には紙袋が2つ、右には3つ。服だけでなく小物の商品も乱雑に詰め込まれているため、重量は膨らんだ見た目と比べても重いに違いなかった。
「いつもこんなに沢山のお店を見て回っているのなら、買い物の病気だわ」
「女の子はみんなそういう病気だよ。まぁ、今日はちと買いすぎた気はするけどね」
 アリスはちらりと左側の地面を見る。椅子の左にもたれ掛かる紙袋が2つ、それはアリスの買った物であった。
「日曜日の度にいっぱい洋服を買って、一体何年かけて買った物全部を着るつもりなのかしら」
「一生かな」
 皮肉のつもりで言った質問をあっさりと受け流され、アリスは口を尖らせる。
 アリスは今日の買い物で何度も不機嫌になった。だが自身の紙袋に詰まっているような、一部の品々に対する好奇心がそれを打ち消していた。彼女もまた、買い物に夢中だったのだ。
「さて、少し遅くなったけど昼食にしよっか。お腹空いたでしょ」
 ホンシアの提案に、アリスは即座に姿勢を正して頷いた。言うまでも無く空腹だった。
「お腹に溜まるものがあれば良いけどね」
 メニューを広げながらホンシアが言った。

 次→「紅霞の向こう」 Part9

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