不思議の国の軟体鉱物

2017-11

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『Respective Tribute』 第5章「約束」 Part3

 前→「約束」 Part2

「……もしかしたら、こうなることを何処かで期待していたのかもしれない」
 まるで悔やむような、力の無い声でローエングリンが言った。
「立ち向かうのが恐ろしいのだろう。勝てる見込みが少ないことを分かっているのだろう。だからこそ、お前を巻き込みたくなかった。それなのに、心の何処かで……」
「ローエングリン……」
 ローエングリンは変わってしまった。アリスはその考えを少しだけ改めることにした。
 アリスの兄代わりとしてのローエングリンはあの頃のように、今もまだ、そこに。
「……危険だぞ。生きて帰れる保障は全く無い」
「それは当たり前だわ。いつだってそうよ」
「生き延びたとしても、『女王』に背くことで罰を受けるかも知れない」
「逃げちゃえばいいのよ」
 ローエングリンは無言でアリスを見詰める。問いかけるような彼の眼差しに、不敵な笑みでアリスは応じた。
「……分かった」
 ローエングリンは肩をすくめる。
「共に行こう。一緒に倒そう、『女王』を」
 その言葉に、アリスは力強く頷いた。
「これでやっと、本当に仲間ってわけね」
 今まで黙っていたホンシアがそう言って、アリスの両手を包むように握った。
「よろしくね、アリス」
 アリスは何か引っかかりながらも「あ、ええ」と頷く。しかし頷き終わった時、ある事に気づいた。
「あっ……ローエングリン、ホンシアに私たちの正体――」
「気にするな」
 アリスが言い終える前に、ローエングリンがあっさりと言った。
「そうそう。私には事情はよく分からないけど、気にしないから」
「えっと……まぁ、いいわ」
 アリスは深く考えることを放棄し、ホンシアに笑いかける。
「改めてよろしくね、ホンシア」
 口元の笑みで返答するホンシア。
「アリス」
 ローエングリンが透き通った声を夜空に響かせ、呼びかけた。
「『女王』と戦うのは、明日の午後の予定だ。明日の朝ホンシアを迎えへ行かせるから、今日はゆっくり休むと良い」
「分かったわ」
 ローエングリンは微笑む。今までアリスが見たことの無いくらい、優しい顔で。
「決戦だ。自分らしく、全力を尽くせ」
「当然だわ」
 その言葉に満足したのか、ローエングリンはアリスに背を向ける。
「戻るぞ、ホンシア」
 ホンシアは「それじゃあ、また明日」とアリスに言ってからビルの屋上に降り、置きっぱなしの紙袋を掻き集めてから、飛び去るローエングリンの後を追った。
 1人残されたアリスは屋上に降り立ち、そして明日の戦いのことを思う。
 勝てるわ、私とローエングリン、それにホンシアなら。たった1人でふんぞり返ってる『女王』なんて、きっと敵じゃない。やっと、やっと今までの仕返しが出来るのね。
 アリスは少しだけ胸を躍らせながら、楽観的にそう考えた。楽観的に、あまりに楽観的に。
 泣くことも、知らずに。

 次→「約束」 Part4

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