不思議の国の軟体鉱物

2017-09

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『Respective Tribute』 第6章「スカーレット・ドレス」 Part3

 前→「スカーレット・ドレス」 Part2

「申し訳ありません。お待たせしてしまって」
 陰島の言葉に『女王』は首を振った。
「心の通い合った主従関係を見せて貰ったのですから、お気になさらずに」
 『女王』の表情が分かるくらいの距離まで近づいた所で、陰島は足を止める。
「最高の賛辞を賜り、恐縮です。それと『女王』陛下、お互い堅苦しい建前や言葉は捨てませんか? なにせこれから、殺し合いをするわけなのだからな」
 それを聞いた『女王』はニヤリと笑んだ。
「建前か……先ほどの言葉は本音のつもりなのだが、陰島俊二」
「だとしたら、よほど人間に興味が御ありのようで」
「その通りだ。さもなくば人間の振りをすることも無く、君と戦おうとも思わなかっただろう」
「ならばもう少しだけ、会話する許可を頂きたいのだがね」
「私の許可など必要無いさ。それに戦う相手をより良く知るために、私も君の話が聞きたいのだ」
「それはそれは。嬉しいことだ」
 『女王』と眼を合わせたまま、陰島は右へ右へと少しずつ歩を進める。
「それでは『女王』、まずどうしてこの場所で待ち伏せたのかを聞かせて欲しい」
「魔導士としての君に興味があったからだよ、陰島。君ほどの力を持つ魔導士は私の部下にも数少ない。人間だろうと、『我々』だろうと。だから他者の介入が無い、決闘という形で敬意を示したかった」
「なるほど……」
 右へ。
「それはまた、心から恐れ入る。私の如き老人をそこまで評価してくれるとは」
「年など関係は無いさ。私は君よりも年上なのだから」
「とてもそうは見えないが、本当ならそれは羨ましいことだ」
 右へ。
「ところで、車の代金は補償して頂けるのかな?」
「危険運転致死、というより殺人未遂に眼を瞑るのだ。お互い、細かいことは気にするべきでは無い」
「ふむ、それもそうだ」
 右へ。
「質問はそれだけか? ならば、次は私から聞きたいことがある」
「どうぞどうぞ」
「何故、私と戦おうと思った」
「決まっている。名実共に英雄になれるからだ」
 右へ。『女王』が歪んだ笑みを浮かべた。
「なるほど。人外の首領を倒す、確かにそれは英雄であるな」
「昔から思っていた。自分に特別な何かは出来ないものか。夢物語のような能力、成功は得られないものかと」
 さらに右へ。
「そして、それを諦め続けてきた。10年前まで、ずっと」
「魔力によって、君は自分の可能性を得たということか。それは喜ばしい」
「それで以って魔力をもたらしてくれた者の長である貴方に牙を剥くとは、我ながら恩知らずだとは思うがね」
「そうする自由も承知の上だ。勿論、自己防衛をする自由が私にもあるが」
「そうか……」
 道路と田畑の僅かな段差を越え、陰島の右足がアスファルトに触れる。道路に上がろうとする陰島を、『女王』はまるで見守るように見つめていた。
「あくまで防衛行為しかしないと?」
「そうではないさ」
「それは安心した」
 陰島の両足がアスファルトを踏みしめる。彼の前方には『女王』、彼の後方には屋敷への道。陰島はようやく『女王』の前に立ちはだかることが出来た。
「本気で掛かって来てもらわなければ、つまらない」

 次→「スカーレット・ドレス」 Part4

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