不思議の国の軟体鉱物

2017-05

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『Respective Tribute』 第6章「スカーレット・ドレス」 Part4

 前→「スカーレット・ドレス」 Part3

「その通りだ……どうも我々は似た者同士のようだな、陰島」
「そのようで。本当に、楽しいことになりそうだ」
 陰島はバッ、とロングコートを開げ、両脚に括り付けられた2丁の長銃を一瞬で構えた。即座に加速度を発生させ、路面から数十cm上を飛びながら後退し始める。そして片手に1丁ずつ構えたショットガンを両方同時に発砲する。
 一方の『女王』は散弾の成す弾幕の遥か左側に、まるで瞬間移動したかのように移動していた。それに構うことなく、陰島は進行方向と逆を向いたまま低空飛行を続ける。
 『女王』もすぐに陰島の正面に戻り、追撃を開始した。陰島同様、路面から少し上を飛行し、かつ陰島との距離をある程度保ちながら。
 陰島は冷や汗を掻きつつも手ごたえを感じていた。屋敷へ着く前に『女王』が先制襲撃をけし掛けて来ることは予想――もしかしたら、期待――していた。それに備えて彼が選んだ武器が、このショットガンだった。
 ローエングリンから『女王』が銃器等の武器を使わないことを聞いた陰島は、『女王』を近づけず、かつ命中率の高い武器こそが最適であると考えた。だが『女王』の魔力、反応速度が人外のそれであるのなら、狙わずに当たる武器を選ぶ必要があった。
 狙わずに当たる可能性があり、そして充分な牽制となりうる武器。多数の散弾を発射し、ある程度の距離以内であれば威力、命中率共に高いショットガンは、その条件を充分に満たしている。さらに陰島は銃の固定、排莢、装弾等の操作を魔力によって行うことで、通常では不可能であるショットガンの2丁同時使用を実現していた。
 2丁のショットガンで弾幕を張りつつ自動車並のスピードで後退する陰島。流石の『女王』であろうと、追いつくことは容易で無いはずだった。
 道の両側が田畑から林へと変わり、陰島は地の利までも得る。道路は車2台が擦れ違える程度の幅しかなく、その両側は飛行困難な林。散弾を避けるスペースが『女王』には乏しくなり、対する陰島は左右や後ろから攻撃を受ける可能性が大幅に低下した。仮に陰島が地上10mの空中にいたとしたなら、彼は上下左右前後、あらゆる方向からの攻撃を想定しなければならず、ショットガンも無意味になっていただろう。
 魔導士の戦闘力は周囲の状況に左右される。魔力を使えない者達よりも、遥かに大きく。そして今、陰島の状況は『女王』を近づけないばかりか、倒せる可能性を含む程に有利なものであった。
 陰島は2度目の2丁同時射撃、すぐに排莢、装填、続けて3度目の射撃。その後、振り返って進行方向を見る。道路のカーブが近づいていた。
 陰島は『女王』の方を向かずに、射撃。そして加速度を調節してカーブを曲がる。曲がった直後、陰島は正面に向き直り、『女王』の位置を確認した。相変わらず、陰島から距離を保ちつつ道路の直上を飛行していた。
 陰島は高揚のあまり、笑みを止めることが出来なかった。
 もしかしたら、殺せるかも知れない。他の誰の力も借りず、たった1人であの女を……もしそれが出来たなら、私はまさに英雄であろう。化物を孤独に打ち倒した、生きる伝説と成り得る……!
 そこまで想像した所で、陰島はイカンイカン、と想念を頭から振り払おうとした。早すぎる勝利の酔いは、死と同義である。彼は冷静さを取り戻そうと、ショットガンを撃ち放った。
 『女王』は上昇して散弾をかわし、すぐに元の高さへと下降した。陰島が確認出来た限り、両側が林になってからの『女王』は上昇による回避行動を常に行っていた。それが定石であるかのように。
 陰島は次の射撃時、右手のショットガンだけを僅かに上へ向かせ、左右同時に撃った。『女王』はやはり上昇、しかし先程よりも左寄りに回避した。そして降下し、『女王』は変わらず追撃を続ける。その動きに陰島はある違和感を覚えた。
 『女王』の回避行動は適確である。回避のタイミング、弾幕の範囲が完璧に把握されているかのように。それはつまり、こちらの射撃を完全に見切っているということでは無いだろうか。
 だとしたら、何を見て回避をしているのか。
 陰島は2丁両方を上向きに、『女王』の上部に弾幕が広がるように射撃を行った。『女王』は体勢を低くし、地面すれすれの位置を飛んで散弾をかわす。
 それを見た陰島は確信する。『女王』はこちらの射撃を見切っていると。
 見ているものは何か、陰島は推理を始める。まさか散弾を眼で確認しているのか。可能性は皆無とは言えないが、考え難い。弾丸を視認した後で回避行動に移る余裕など、さしもの『女王』であろうと無いはずだ。
 弾丸が発射されるよりも早く、弾の発射タイミングと飛散範囲を知る方法。もしそれがあるとするならば……
 陰島はちらりと右手のショットガンを見た。銃口は正面を向き、トリガーには人差し指が掛けられている。
 果たして、『女王』の距離から銃口の向きと指の動きが正確に読み取れるかどうか。猛禽類のような視力が無い限り不可能、だが相手は『女王』という化物である。少なくとも他の可能性よりは現実味があった。
 ならば、試すのみ。

 次→「スカーレット・ドレス」 Part5

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