不思議の国の軟体鉱物

2017-08

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『Respective Tribute』 第6章「スカーレット・ドレス」 Part7

 前→「スカーレット・ドレス」 Part6

「素晴らしいぞ、陰島」
 猛攻を続けたまま、『女王』が陰島に語りかける。
「私の攻撃をここまで跳ね除けるとは、恐れ入った。私の知る人間の中でも、君ほどの人間は5人といない」
 つまり、他にもいると言うことか。陰島はそう思いつつも、防御に手一杯で口に出す余裕は無かった。
「予想以上だ。1対1で戦えて、本当に良かった。勝利の喜びも、人間への更なる敬意も、君という人間の記憶も、何もかも得られる戦い。私がより高く、高く、高く、高く望みへと昇り、自由で、自由であるための力となる戦い、そう、まさにこれこそ、その戦い、その戦いなのだっ!!」
 爆発する狂喜の笑い。敗北を考えていないその全てが、陰島を不快にさせた。
 思わず我が身を省みずに反撃を考えてしまう程、陰島の我慢は限界に達していた。それを押しとどめたのは、左右を通り過ぎた洋風の門柱である。
 陰島と『女王』は示し合わせたかのように同時に飛行速度を緩めた。陰島の目の前に見える門、それは屋敷へと辿り着いたことを示していた。
 極限の中、陰島は神埼との約束を守り通したのだ。
「おめでとう、陰島。私の攻撃に耐え、仲間の待つ場所へと至ることが出来た事、真に見事だ」
 なおも攻撃を緩めない『女王』の賛辞を聞き流し、『女王』の腕を手刀で捌きながら、陰島は周囲の建物に目を配る。建物の2階、狙撃手が窓から狙いを定めている姿を必死で探した。
 神崎が命令通りに狙撃手を準備したのなら、この絶好のチャンスに『女王』の脳天を貫かんと銃身を突き出している者が必ずいる筈である。それなのに、何処にもそれが見えない。
 唯一見えたのは、窓からだらりと垂れる、人の腕。
「どうした陰島。注意力が散漫して、眼が泳いでいるかのようだぞ」
 悪戯めいた悪意が込められた声。陰島の眼は『女王』の表情へ焦点を合わせる。
「陰島、先ほども言ったが、私は勇敢でも無ければ、愚かでも無いのだよ」
 嫌らしげな微笑、それが狙撃班の全滅を告げていた。
 陰島は完全に理解した。『女王』は多勢に無勢で挑むほど勇敢でも無ければ、愚かでも無い。如何に自分が一騎当千の強者であるかを大胆に示しつつ、その裏で部下を使って姑息に安全を確保する。その手法はまさしく、投資家としての彼女の手法そのものであった。
 全身の毛が逆立つような感覚、湧き上がる憤怒に眩暈すら覚える中、陰島は速度を増して『女王』の腕を叩き、『女王』もそれに合わせて攻速を高めて行く。その反動を踏ん張るため、宙に浮いていた両者の足が地面に降りる。
「『女王』……私は腹を括ったよ」
 攻撃を受け流すのに手一杯で、口を開くことすら出来なかった陰島。しかし激しくなる応酬の中で、その口が言葉を呟いていた。
「貴女は私を助太刀する者が現れぬよう、手を尽くしたのだろう。決闘を誰にも邪魔させないように、あらゆる手を打っているのだろう」
 微笑んだまま、『女王』は肯定も否定も示さない。
「1つだけ、教えて欲しい。私と同じ車に乗っていた男は無事か?」
「ああ、無事だとも陰島。狙撃手と地下室にいた人間以外は、今のところ全て無事だ」
 その意外な言葉に、陰島は思わず手を止めてしまうところだった。
「私が一時撤退し、体勢を整える可能性を考えてないのか?」
「君はそのようなことはしない。そうだろう、陰島」
 ニヤリと笑う『女王』、陰島も不敵に笑い返した。

 次→「スカーレット・ドレス」 Part8

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