不思議の国の軟体鉱物

2017-08

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『Respective Tribute』 第6章「スカーレット・ドレス」 Part11

 前→「スカーレット・ドレス」 Part10

 正門をくぐり、急ブレーキで停止する車。運転席から降りたのは携帯端末を耳に当てたホンシア。助手席から降りたのはバールのようなものとガンケースを携えたアリス。
「ローエングリン、聞こえる? 状況はどうなってるの?」
 そう言った後、携帯端末に「うん、うん」と相槌を打つホンシア。その横でアリスは、周囲に所々落ちている真っ赤な物体に首を傾げていた。
「ねぇホンシア、この落ちている物は一体何かしら?」
 その問いかけを無視し、ホンシアは「了解。それと、ちょっと待って」と言って携帯端末をアリスに差し出す。
「ローエングリンに言いたいことがあるなら、今のうちに」
 アリスはそれを受け取り、耳に当てる。
「ローエングリン?」
「アリスか……調子はどうだ?」
「完璧よ。今日なら『女王』にだって勝てる気がするわ」
「そうか……頼んだぞ」
 その静かな声調に、アリスはあの日を思い出した。ローエングリンと別れたあの日。『女王』に対する感想を求められた、あの日。
「ローエングリン、1つだけ約束してくれるかしら?」
 ローエングリンはあの時もう、『女王』と戦う決心をしていたのかしら。
「何だ」
「私とした約束。エルザをずっと守るって約束、これが終わったら今度こそ守ること。良いわね?」
「……分かった、約束する」
「絶対よ。必ず」
 そう言って、アリスは携帯端末をホンシアに返し、ホンシアは二言三言ローエングリンと言葉を交わした後、携帯端末をズボンのポケットに入れた。
「アリス、私達は中庭と書斎が良く見通せる位置で待機だって。そうなると、南側の屋根かな」
「屋根?」
 ホンシアが見上げる方向をアリスも見た。瓦の乗った緩やかな三角屋根が、夕陽に染まっている。
「中庭全体が見えるし、廊下を狙うのも問題は無いと思う。だけど『女王』の仲間に見つかる可能性も高いから、それはアナタに任せる」
「ええ、私なら誰が相手でも大丈夫よ」
 胸を張って答えるアリス。
「頼んだからね。それじゃあ、行くよ」
 上昇するホンシア。アリスもそれに続いた。館南側の屋根に着地した2人は身を屈めながら移動し、書斎の中が見える南棟中央付近で動きを止める。
「この辺りかな」
 ホンシアはアリスからガンケースを奪うように取り上げ、中身の狙撃銃を構えて屋根に伏せる。
「うん、悪くない。屋根瓦が少し痛いのが難点だけど」
「この屋根デコボコしてて、ちょっと動き辛いわ」
「ビルみたいに平らじゃないからね。転びそうだったら少し浮いてた方がいいかも」
 そのアドバイスに従うことにし、アリスは少しだけ宙へと浮く。瓦の不安定さから解放されると同時に、視界が僅かに広がった。
 そして彼女は、視線の先に女性らしき姿を見つけた。館の東棟、その屋根の上に。
 目が合ったであろうその瞬間、その何者かは屋根の上を高速で飛び跳ね始めた。瓦を粉砕しながら、東棟から南棟へと猛烈な速度で跳ね抜け、そして――
「くっ!!」
 アリスは屈んでいた体勢から急いで立ち上がり、武器を構える。バールのようなものと女の赤い靴が、勢い良く激突した。
「カレンッ!!」
 彼女は敵の名を呼んだ。赤いボブヘアー、細長いタイトジーンズの脚、真紅の靴。
 それは紛れも無く、『靴の女王』と名付けられた旧知の大シンボル、カレンの姿だった。

 次→「スカーレット・ドレス」 Part12

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