不思議の国の軟体鉱物

2017-06

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『Respective Tribute』 第7章「嘘」 Part4

 前→「嘘」 Part3

 ホンシアはスコープから目を離し、煙の中に『女王』の姿を探した。爆発の直前、スコープ越しに捉えたその姿を。
 恐らく、第1の策は失敗したのだろう。その予感に、ホンシアは何故か気分が高揚していた。
 第1の策――狙撃を警戒する『女王』を足止めした上での、爆発物による奇襲。それが失敗した場合、ローエングリンは遮蔽物の無い中庭に『女王』を誘導する手筈になっている。
 その状況から始まる第2の策――ローエングリンが近接戦で『女王』の動きを抑え、ホンシアが狙撃により射殺するという連携。それはホンシアの手で『女王』を殺せる作戦であった。
 だから彼女の胸は高鳴っていくのだろう。成功すれば、狙撃手としての、そして復讐者としての本懐を遂げることが出来るのだから。
 そう、成功さえすれば――
 そんな彼女の緊張を邪魔する様に、狼狽した調子のアリスが傍らに着地した。
「び、びびびびっ」
 言葉にならない声を漏らす情けない姿に、ホンシアの調子が狂わされる。
「落ち着いてよ、アリス」
「びっくりしたわっ!! 突然、あんな近くで大きな音がして、建物が壊れたのですもの!! 一体何が、どうしたっていうのかしらっ!?」
「ただの爆発だって」
「ただの爆発って、あんなにびっくりしたの初めてよっ! 貴女のドーンっていう銃の音より、ずっと大きかったわ! どんな凄いものを使えば、あんなに大きな音が出るのかしら」
 ホンシアは興奮するアリスに呆れつつ、ガンケースから狙撃銃の弾を数発掴んで投げ渡した。
「あっ……」
 反射的にそれらを取るアリス。手の中の物を見て、目をぱちくりとした。
「たとえば私の銃の場合、音の正体はそれ。そんな小さな物で、あの大きな音を出したわけね。だからさっきの爆発も、そんなに凄いものを使っているわけじゃ無いんだよ」
「そうなの……かしら?」
「そうなの。どんなに迫力があっても、正体なんてちっぽけな物だったりするわけ。だから、大丈夫。私達は勝てるって」
 言葉にしてから、ホンシアは自身の論理展開が意味不明である事に気づく。もしかしたら、「勝てる」という言葉を言いたかったのかも知れない。アリスのためではなく、自分自身のために。
「ええ……そうね、そうよね」
 落ち着きを取り戻したアリスが頷く。そして彼女はじっと、手の中の銃弾を見つめた。
「ねぇホンシア、これ貰っても良いかしら」
「別に良いけど、どうして?」
「よく分からないけど、持っていると落ち着くと思うのよ」
 そう言って、アリスはスカートのポケットの中へと弾を落とした。
「御守りって言うのかしら?」
「そうかもね」
 頬を緩ませてしまうホンシア。死地において、どうして自分たちはこんなにも呑気に言葉を交わせるのか。恐らくアリスは最悪の結末なんて考えていないのだろう。遊び気分でここにいるのだろう。
 だが、ホンシアはそうでは無かった。
「私だと思って、大切に使ってね」
「私でも使えるのかしら」
「底を思いっきり叩けばもしかしたらだけど、危ないし……止めといた方が良いかもね」
「そうね、それに勿体無いわ」
 微笑んだアリス。その後ろで、ばりんっ、と瓦の割れる音がした。
 アリスが振り向き様にバールのようなもので薙ぎ払う。デジャブのように、バールのようなものと赤い靴がまたしても交差した。すぐさまカレンは後方に宙返りして着地し、揚げた右足でアリスを指した。
「あの方には手出しさせないから。貴女なんかに、あの方の決闘を邪魔させるわけにはいかない」
「決闘……?」
 アリスは首を傾げる。一方のホンシアは言葉の意味を察し、視線を中庭に移した。
 芝生の上、2つの人影が確かにいる。片方は立ちながらも動かず、もう片方は尋常でない速度でその周りを動いていた。
 異様な2つの影。間違い無く、その片方こそ――

 次→「嘘」 Part5

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