不思議の国の軟体鉱物

2017-10

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『Respective Tribute』 第7章「嘘」 Part12

 前→「嘘」 Part11

 『女王』が苦痛に怯んだ刹那、ローエングリンは出せうる全ての魔力で剣を振った。振り上がることも無い弱々しい斬撃は、しかし『女王』の左脛に食い込む。
「ローエングリン……!!」
 憎々しげに『女王』がローエングリンを見る。
「自分の命を囮に、ホンシアの銃撃を成功させたということかっ!!」
 『女王』は即座に左脚を動かし、赤く染まる傷から剣を抜き、そのまま左の足で剣を踏みつけた。
「見事、だが失敗だっ! だが、だが、だがっ!! 分かったぞ、ローエングリンッ!! エルザを守ろうという信念は君だけが背負っていた、しかし君は目的が同じ者、即ち私を打倒せんとする者たちと共に歩むことでその重みに耐えたということかっ! 攻撃は最大の防御、つまり陰島、神崎、ホンシアという剣がエルザにとっての盾と成り、そして君は剣としての彼らを信頼していた、そうだ、そういうことなのだろうローエングリンッ! まさしく君たちは仲間、それぞれが何かを背負いつつも決してそれを誰かと分かち合わない、だが全員が同じ目的に向かう、そんな対等の仲間だったのだろう!? それぞれの意志を、それぞれの敬意を持つ者たち、だから私がここまで、ここまで血を流したのだっ!!」
 『女王』の右腕が大きく振り上げられた。
「君の主であったことを、私は誇りに思う。『守護』を目指す中で人間と深く関わり合い、共に歩むことが出来た君の主であったことを。『守護の王』の名に相応しい、君の主であったことを」
 最後に、『女王』は満足げに微笑んだ。
「見事だった、ローエングリン」
 鮮血を飛ばしながら振り下ろされた手刀によって、ローエングリンの首から血が噴出す。それを背に浴びながら『女王』は振り返る。南棟の屋根、ホンシアのいる場所を見つめ、彼女は猛速で飛び立った。
 残されたローエングリンは、静かに目を閉じる。
 大丈夫、まだアリスがいる。アリスはまだ、生きている。アイツならきっと、必ず。
 あんなに巻き込みたくなかったはずなのに、何故だ、願ってしまう。アイツが俺の、俺達の遺志を継いでくれることを。エルザと同じように、汚したくはなかったのに――
 瞼の裏、あの湖の記憶が映る。栗毛色の無垢な笑み、不機嫌そうな金色、自分はどんな顔を――
 あぁ、そうか。もう、駄目なんだな、3人じゃないから。俺が死んだら、もう二度とあの日々は戻らないから。
 だから、もう……いいんだ。あの2人が、生き延びてくれるのなら……
 そう……ああ……エルザ……もう一度だけ、会っておけば……何かが……
 何かが、変わったかもしれない。そのイメージが言葉の形を成す前に、ローエングリンの精神は途切れた。
 残されたのは白い死体に赤い血、白銀の刃。
 真っ黒にくすんだ思考、苦悩も後悔も恐怖も、もはや無い。
 栗毛色と金色の思い出も、もうそこには無い。
 死んだ男にはもう、何も、無い。

 次→「嘘」 Part13

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