不思議の国の軟体鉱物

2017-05

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『Respective Tribute』 第7章「嘘」 Part14

 前→「嘘」 Part13

 ホンシアが殺される間際。戦闘不能となったカレンを見下ろしながら、アリスは誇らしげに笑っていた。
「私の勝ちね、カレン」
「……」
 だが、カレンの目はアリスの顔を見ていない。顔の右側を屋根に付けたまま、その目は虚空を見つめているかのようだった。
「悔しくて、何も言えないのかしら?」
「アリス……確かに貴女は私に勝った」
 カレンの敗北宣言に、アリスはさらに得意げな表情になってしまう。
「でも、それだけ」
 そう言って微笑んだカレンの、その目付きが愛しげに細まる。
「やはり、貴女は素晴らしいです、『女王』……」
 咄嗟に、アリスはカレンの視線を追う。南棟の屋根の上、2人の影。1人が立ち、1人が倒れ――アリスはすぐに気付いた。立っている1人が誰なのか。そして、倒れている1人が誰なのか。
「嘘……」
 頭の中が真っ白になったような感覚。アリスは全力の加速で以って飛び立っていた。
 距離を考えない速度。不安に思考が押しつぶされる中、過ぎるイメージ。胸騒ぎに耐えかねて、彼女は叫んだ。
「ホンシアッ!!」
 叫ぶと同時に振るう、バールのようなもの。『女王』を倒すためではなく、『女王』をホンシアから遠ざけるための一撃。『女王』はその一撃を上昇してかわし、アリスは己の速度を相殺するため、加速度を心の限り発生させた。
 停止と同時に振り返るアリス。『女王』が離れた位置に着地したのを確認した彼女は、ホンシアへと駆け寄る。
「ホンシア……」
 喉を切り裂かれ、血まみれのホンシア。アリスはぺちぺちと、頬を叩いた。応答は無かった。
「ホンシア、こんな場所で寝てないで。しっかり起きて、ホンシア」
 両肩を掴み、揺さぶった。力の無い表情はそのままだった。頬をつねり、引っ張った。痛みすら感じていないようだった。閉じた瞼を無理矢理開いた。瞳孔は開ききっていた。
「ホンシア……ホンシアぁ……」
 溢れる涙、こぼれる雫。
 どうして、どうしてこんなことになったのかしら。私がカレンに構って、ホンシアを守らなかったから? それとも人をたくさん殺した、ホンシアが悪いの? それとも、それとも、それとも……
 止まらない涙、漏れる嗚咽、まとまらない思考。それらを一蹴するかのように、その声は言った。
「久しいな、アリス」
 夕日の最後の一射しを受けながら、凛と立つ。その姿はまさに――

 次→第8章「女王」 Part1

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