不思議の国の軟体鉱物

2017-10

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『Respective Tribute』 第8章「女王」 Part2

 前→「女王」 Part1

「『女王』…………!」
 忌々しげな声を出し、アリスは涙目のまま『女王』を睨んだ。
「本当に久しいな、アリス」
 怨嗟の眼差しに対し、『女王』は嬉しげに微笑む。まるで、何事も無いかのように。
 アリスの怒りはもはや噴出すしか無かった。言語として成り立たない雄叫びと共に、彼女はバールのようなものを力任せに振るう。必然であるかのように、その暴力は『女王』を掠めすらしなかった。
「穏やかではないな、アリス」
「どうして……どうしてホンシアをっ!!」
 振り払い、振り上げ、振り下ろして。バールのようなものを振り回しながら、アリスは『女王』へと少しずつ歩を進めていく。
「単純な理由だ、アリス。彼女は私を殺そうとした。だから私は彼女を殺した。対等の権利として」
 アリスが1歩進む度に、『女王』は1歩下がって行く。間合いは変化しない。アリスの攻撃は、少しも当たらない。
「ひどい……ひどすぎるわ!」
 怒りに任せて、アリスは思いっきり得物を振り下ろす。次の瞬間、アリスは宙へと突き上げられた。
「ぐあっ……!」
 落下運動に転じるよりも早く加速度を発生して、アリスは背中を打つこと無く屋根へと着地する。顎と首に感じる痛み。『女王』の手が自分の顎を払い上げる動作を、彼女の目は捉えていた。だが、回避するまでには至らなかった。
 過去には一瞬で重傷を負わされた『女王』の攻撃。アリスはその攻撃速度に反応出来る程の成長を遂げていた。しかしその一方で、アリスと『女王』の実力差は未だに決定的であった。
「情けないぞ、アリス。だが、嬉しい。君が生きていてくれたこと、君と外の世界で会えたこと、本当に、本当に喜ばしい」
「ふざけないでっ!! ホンシアを殺したくせに!!」
「それが敬意さ、アリス。私なりの、敬意なのだ」
「敬意ですって……」
 「そうさ」と肯定し、『女王』は右肩の弾痕をアリスに向ける。まるで勲章であるかのように、堂々と。
「これがホンシアの付けた傷だ。狙撃銃を奪われた彼女が、当たるはずの無い銃で狙った結果だ。まさに全身全霊、命をかけた一撃。ならばそれに対して、私はどうすれば良い? 何をすれば、対等だと言える?」
 『女王』は下に向けていた右手を上へと向けた。その指先は血に塗れている。
「手加減せず、殺す。それが私を殺そうと動いた相手への、私なりの敬意だ」
「そんなの、馬鹿げてるわ!!」
「馬鹿げている? 彼女には、彼女達には私を殺したいほどの理由があった。私を殺そうという心があった。ならば、私も対等の心を持つのが正当。それこそがお互いの誇りを守り、お互いの命が同等であるという敬意である。違うか?」
「分からない、そんなの分からないわっ!!」
 ぶんぶんと、アリスは首を横に振った。『女王』の論理など、彼女にとっては理解不能な妄言そのものだったから。
「理解できないか、アリス。それでもいい、だがそれなら君はどうするつもりだ」
「どうするって……」
 そんなことは、決まっていた。ホンシアを殺した相手が、自分の敵が、すぐ目の前にいる。取るべき行動に、考える余地など無かった。
 彼女は駆け出し、バールのようなものを再び振るう。だがその先端すら、『女王』には届かない。
「私をよく見るんだ、アリス。対象の正しき認識こそ、魔力の基本だ」
「うるさいわっ!」
 『女王』を否定するかのように、アリスはがむしゃらにバールのようなものを振るった。
「それではつまらないんだ、アリス。それでは」
 その言葉の直後、バールのようなものが『女王』の右手に掴まれていた。
「えっ……」
 絶句するアリス。
「武器を振り切った一瞬、無防備になるようではな」

 次→「女王」 Part3

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