不思議の国の軟体鉱物

2017-11

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『Respective Tribute』 第8章「女王」 Part4

 前→「女王」 Part3

「ホンシアを殺したくせに、偉そうに……」
 どんなに人間を賛辞しようと、目の前にいるのは人を殺した女。
「偉そうにっ!!」
 アリスは我慢できなかった。
 殺人者が人間を語ることを。ホンシアを殺した者が、ホンシアを語ろうとすることを。
「何を怒っているのだ、アリス。私がホンシアを殺したからか? だがな、アリス。何度も言うがホンシアの殺意に見合うものは、やはり私の殺意しか無い。だから私は対等に、正当に彼女を殺した。それこそが、私の敬意なのだよ」
「知らない! 関係無いわっ!!」
 首をぶんぶんと振り、アリスは必死に否定する。
「そんなもの、貴女の独り善がりよ!!」
「正当防衛だよ、アリス。それにもし私が彼女を殺さなかったとしたら、それは彼女の意志を軽んじているということになる。彼女が自らの選択で私を殺そうとしたのだから、私はその決定を重んじなければならない。殺意には殺意で、対等を以て正当とする。対等を以て、自由とするのだ」
「違う!!」
 アリスの中で想起される記憶。
 ホンシアは言っていた。殺すのは怖いって。でも殺さなければ、自分じゃいられなくなるって。
 きっと、ホンシアには『女王』の言うような意志なんて無かったのよ。他に道が無くて、他にどうすることも出来なくて……自由なんて、どこにも無かったに違いないわ。
 それなのに『女王』は、勝手に決め付けて、簡単に殺して……!
「許せない……許せないわっ!!」
「アリス、よもや君がそこまでホンシアに入れ込んでいるとは……鎮めるつもりが、逆に憤らせてしまったな」
「貴女の言葉なんかに、私は落ち着いたりしない! 貴女はいつだって、いつだってそうよ!! 言葉だけ偉そうで、だけどやっていることは最低、最低なのよ……!」
「最低、確かにそう見えるかもしれない。だがアリス、私は」
「うるさいわっ!!」
 力任せに片手で振るう、バールのようなもの。造作もなくかわされたその運動は、しかし『女王』の言葉を断つことだけには成功した。
「貴女の言葉なんかで、何が伝わるっていうの!?」
「聞く耳持たずか、アリス。ならば、それでいい。こちらも喋りすぎた」
 掲げられる『女王』の右手。
「私を理解したくないのならば、刻み付けるだけだ」
 その言葉と共に加速する『女王』、アリスは反射的にバールのようなものを振り上げる。しかし、前へと加速したはずの『女王』の身体はその射程外、アリスから離れた位置にあった。
 再び加速する『女王』に対し、慌てて防御の構えをするアリス。敵の右手を打ち払おうと、バールのようなものを振るった。
 その一撃は、やはり掠りもしなかった。
「くっ!!」
「良いじゃないか、アリス」
 『女王』は後ろへと加速し、再び距離を取っていた。余裕の表情を浮かべる『女王』に対し、アリスは焦りを隠すことが出来無い。
 速い……やっぱり速いわ。
 瞬時に加速度の方向を変える反射神経と加速度自体の大きさ、それは明らかにアリスを凌駕するものであった。例えずとも、化け物と言う他ない。アリスはそれを実感しながらも、もう1つのことも感じていた。
 攻撃を払い除けることが出来た。対抗することが出来た。決して、自分は無力では無いと。
「冷静さの代わりに激情で以って、その力を高めたか。だがな、アリス。力とは大きさと方向で成り立つ。今の君はまるで方向の定まらない力を反射的に振り回しているだけで、それではまだつまらないのだ。私を落胆させるつもりか?」
「だから、うるさいって言って……」
 言葉と共に前へ出て、振り下ろしたバールのようなもの。それをすり抜けたかのように、『女王』の右手がアリスの襟元を掴んでいた。
「意志が、意志が必要なのだよアリス。私を本気で倒したいと考えているのか? それとも単純に怒りを発散しているだけか? 後者か、後者なのだろうアリス。それでは私が傷を付けた所で君には無意味であろう。ならば仕方ない、君が背負うべきもの、君に託されしものを見せる他無い」

 次→「女王」 Part5

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