不思議の国の軟体鉱物

2017-10

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『Respective Tribute』 第8章「女王」 Part6

 前→「女王」 Part5

 ローエングリンの右手に未だ握られている剣。アリスはその指を解き、左手で剣を掴む。
「アリス、その剣を取るか。その剣を使いこなすつもりならば、君はローエングリンの意志を理解している必要がある」
 ローエングリンの意志、ローエングリンの夢。
「君は理解しているのか? 彼の想いを、決意を」
 それらはもう、この胸の奥に。
「『女王』……」
 右手にバールのようなもの、左手にローエングリンの剣を持ち、アリスはゆっくりと立ち上がる。
「いいえ、貴女は『女王』なんかじゃない。仲間を、ローエングリンを殺して……そんな、そんな立派な名前、貴女には似合わない」
 バールのようなものを持ったまま、右手で涙を拭いながら。微かに震えた声でアリスは言った。
「ルーシー、貴女はただのルーシーよ」
「その通りだ、アリス。君も私も対等、同じ『女王』の称号を持つ者だ。私だけを特別視する理由など無い」
「そう、私は女王なの。『夢の女王』、アリス。だから、ローエングリンの夢も、ホンシアの夢も、私と共にあるわ」
 涙は乾いていない。だが、もう流れやしない。堪えるだけの決意が充分にあったから。
「だから、私は倒す」
 悲しみは消えてなんていない。涙もずっと流していたい。だけど、それじゃあいけない。
 だからアリスは振り向いた。ルーシーを見据える、決意の眼差し。愉悦の笑みを浮かべるルーシーにも負けることの無い、力強い表情。
「ルーシー。貴女を、倒す」
 アリスの脳裏に、ローエングリンと過ごした幾つもの場面が過ぎる。ホンシアと過ごした僅かな時間が過ぎる。
 その思い出に動かされるように、彼女の左手が剣を構える。ローエングリンの構えを模した、受けの構え。ルーシーとアリスを結ぶ直線を断つように、剣先が光る。
「受け止められるか、私を。受け流せるか、私を。ローエングリンのように」
「ローエングリンには敵わないかも知れない。だけど、私にはもう1つあるわ」
 アリスの右手には、彼女自身の武器がしっかりと握られていた。
「2対1ということか、アリス」
 ルーシーの言葉を、アリスは首を振って否定した。
「3対1よ、ルーシー」
「そうか……」
 そう言って、ルーシーは両手を広げた。それと同時に、館中の電灯が点灯する。まるで、アリスを賛美するかのように。
「今宵最後の相手として、充分な精神を持ちえたようだな、アリス」
 明かりに照らされたルーシーの全身を、アリスは改めて確認した。その身体には所々、真新しい傷がある。
「ずいぶん手酷くやられたみたいね」
「その通りだ、アリス。陰島、神崎、ローエングリン、ホンシア。皆すべて、強き者だった。そして受けた傷の分だけ、私もその強さを己に刻み込むことが出来た」
 右手で作った手刀を、ルーシーが構える。
「私の心は今、非常に昂っている。傷付き動かぬ箇所を補うに充分な程、闘志がこの身を満たしている」
 まるで勝利者が決まっているかのように、ルーシーは不敵に笑みを浮かべる。
「侮るな、アリス。一瞬でも侮るようなら、君もその程度でしかないということだ。その程度しか、人間を、その精神を評価していないと」
 反撃のように、アリスも微笑む。強がりでしかなかったが、それでも弱さを見せるわけには行かなかった。
「私は決して容赦しないわ。そんなことしたら、2人に合わせる顔が無いもの」
「そうか、ならば」
 動き出す。
「行くぞ」

 次→「女王」 Part7

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