不思議の国の軟体鉱物

2017-08

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『Respective Tribute』 第8章「女王」 Part7

 前→「女王」 Part6

 急激な加速と共に、ルーシーがアリスに迫る。その身体は、ローエングリンの剣の前で左方へと運動方向を変えた。
 アリスもそれに合わせ、ルーシーが襲い掛かってくるであろう方向へと素早く剣の刃を向ける。いつだって自分の攻撃を受け止めて来た剣で、彼女はルーシーの攻撃を防ごうとする。ローエングリンの動きを思い出しながら、少しでも彼のような守りになるように。
 左方に動いたルーシーがさらにアリスの左、そして背後へと回ろうと動く。目で追うのがやっとの動きに、アリスの左手は追いつかない。だから彼女は、右手の凶器を背後に向けて思いっきり振り払った。
 手応えは無い。だが、気配はあった――自身の頭上に。
 アリスは素早く回避に移った。彼女が立っていた地点に、上空からルーシーの蹴りが突き刺すように飛んで来る。
「よくぞ見切った、アリス!」
 再び左手の剣を構え、ルーシーと向き合うアリス。
「見切ってなんていないわ。貴女の動きに私が付いて行けるだけよ」
 アリスは強気な口調でそう言ったものの、内心では今のような回避を何度も行える自信が無かった。このまま守りに徹したままで、果たして自分に勝機があるのかどうか。彼女は一抹の不安を感じずには居られなかった。
 ローエングリンの真似だけじゃ、きっとダメ。私の、私自身の戦い方も無ければ、勝てやしないわ。
 そう考えた彼女は、剣でルーシーを牽制しつつ外灯へと近づいて行く。
「何を企んでいる?」
 楽しんでいるかのような笑みでルーシーが言った。それに答えるように、アリスはバールのようなもので外灯を強く叩いた。外灯は根元から折れ、ルーシーの方向へ勢いよく倒れて行く。
「おっと」
 それを難無く回避するルーシー。その動きを確認したアリスは、外灯に次なる魔力を加える。彼女は地面に倒れた外灯を浮き上がらせ、振動加工により柱の両端を切断する。その加工により、外灯であった柱は巨大な棘と化した。
 その棘を、アリスはルーシーに向かって穿つように発射した。高速で貫きかかる鋼鉄の飛翔、しかし大きく尖ったその先端はルーシーの目前で捻れ、潰れる。棘と化していた柱の速度も急速に失われ、落下する。ルーシーの魔力が、アリスが即席で造り上げた凶器を完全に無効化したのだ。
 そしてルーシーは唐突に、後ろへと急加速する。直後、上空から飛来したローエングリンの剣が地面に突き刺さり、続いてバールのようなものを振りかぶったアリスが落下と加速を込めた強力な空振りをする。
 柱による攻撃だけでは有効打にならないと予想し、柱の発射と共に上昇していたアリス。そこから繰り出した追加の連撃だったが、それらは微塵も命中しなかった。
「まだまだぁっ!!」
 アリスは地面に刺さった剣を引き抜き、まだ残る加速の勢いで以って切り払う。だが、それも当たらない。
 回避の連続でアリスから距離を取りつつあったルーシーに向かい、アリスは潰された柱を浮き上がらせ、魔力の加速度で放り投げる。そして、間髪入れずにルーシーへと斬りかかった。
 柱はルーシーにより両断され、彼女の左右を過ぎて行く。続くアリスの打撃と斬撃も、驚異的な加速度で後方へと逃げたルーシーにかわされる。
「危ない危ない。このままでは分が悪いな」
 そう言いながらルーシーは高く宙を舞い、館の屋根を越えて正門のある西へと飛行する。
「待ちなさい、ルーシー!!」
 アリスは走り出し、館の壁を魔力で破壊しながら中庭から正門へと出る。薄暗い夕闇と屋内からの明かりが混じる中、ルーシーの姿は何処にも無かった。
「どこにいるの、ルーシー!」
 絶え間無く繋げた攻撃を全て避けられ、アリスは焦りを感じていた。自身の周囲に目を凝らすもルーシーの姿は無く、それが彼女の焦燥感をさらに強くする。自分とルーシーには、明らかな優劣が存在するのではないか。過去の記憶や仲間を守れなかった事実が、彼女にその想念を抱かせ始める。
 違う、違う。彼女は己の中で否定し続けた。もしも優劣を感じてしまえば、ルーシーを倒すことなど出来ない。自分の限界を定めることは、アリスにとって最も避けるべき考えであった。
 劣等の意識を振り払うように、彼女は上空を見上げる。ルーシーは無い。だが、そこに別の物があった。暗がりよりも黒く塗られた、1台の車。空に在る筈も無いそれが、アリス目掛けて落下していた。
 衝突よりも早く、アリスは加速度発生でその場を離れる。だがフロントから地面に落下した車は、その反動によりアリスの方向へと倒れて来た。
 彼女は右手のバールのようなものを振るい、振動破砕のイメージと共に車へと叩き付ける。車体は叩かれた箇所を中心に内側へと潰れながら、アリスとは反対方向に倒れた。
 アリスは再度、上を見上げた。これは明らかにルーシーの攻撃。ならば、ルーシーは上空にいる可能性が高い。だが、彼女の目に映ったのはもう1台の車であった。
 その落下速度は先ほどの車よりも速く、避ける時間が足りないと判断したアリスはローエングリンの剣を振るう。振動加工のイメージを込めたその斬り付けは車体を両断し、左右に分かれた電気自動車は彼女を避けるように落下、倒れる。
「素晴らしいぞ、アリス」
 アリスは反射的にその声の方向を向いた。正門との間、ホンシアの車の真上。そこにルーシーが、まるで幽鬼のように浮かんでいた。

 次→「女王」 Part8

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