不思議の国の軟体鉱物

2017-10

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『Respective Tribute』 第8章「女王」 Part9

 前→「女王」 Part8

「今宵の戦いの中で、私は人間の闘争心をより深く知ることが出来た。彼らの闘争の源流もまた、敬意であった。彼らの強さを引き出したのは、敬意に他ならない。ならば私も、敬意を表さなければならない。彼らのような強さを得るために、彼ら自身を敬意する。その敬意が、私により強い力を与えてくれるだろう。そしてアリス、君が私に比肩するためにはもっと強く、もっと深い敬意が必要だ。ローエングリンに対する、ホンシアに対する敬意が」
 その忠告が、アリスをさらに苛立たせる。ルーシーが示した敬意により、ローエングリンもホンシアも命を奪われた。そんな敬意など、アリスは決して抱きたくは無かった。
 だが、それでも。
 アリスは、2人を想わずにはいられなかった。
 去来する、彼らとの記憶。しかし、そこにルーシーの言うような敬意は無い。
 そこに在るのは、愛おしさ。
 まるで自分の一部であるかのような、大切さ。
 消えては浮かぶ情景の中で、アリスは思い出した。ホンシアから受け取ったある物を。
「アリス、ローエングリンはその剣をどのように使っていた? 君自身、分かっているはずだ。君の激しい攻撃の中に、『守護の王』たるローエングリンの意志は見当たらなかった。あったのは君の意志だけ。君はもっと、ローエングリンを敬意しなければならないのだ」
 ルーシーに対する反論は、まだ浮かばない。しかし彼女の言葉に抗おうとする意思は、アリスの中で確固たるものに成っていた。
 アリスはエプロンドレスのポケットに入っている物体を握り、決意する。
「聞いているのか、アリス――」
 言葉を遮るように、アリスはバールのようなものを振るった。同時に響き渡る、破裂音。
「弾丸……ホンシアの弾丸かっ!!」
 アリスは2発目の弾丸を宙へ浮かべ、その底部をバールのようなもので打ち払った。再び破裂音が響くが、その弾丸がルーシーに命中した様子は無い。
「分かっていない、分かっていないぞアリスッ!! 敬意しろと言ったはずだ!! ホンシアはそのように弾丸を用いたか? 彼女の狙撃を尊重しなければ、その弾丸が私に命中することなど決してありえない、ありえないのだよ!!」
 3発目、4発目とアリスは弾丸を叩き飛ばす。当たらない。狙った方向に飛んだ形跡すら無い。
「アリスッ!!」
「うるさいわっ!!」
 再びポケットに手を入れ、アリスは残りの弾丸を掴もうとする。その時、手に布切れらしき物が触れた。
 ――返し忘れたハンカチ。泣いてしまった夜。慰めと優しさ。
 夜の摩天楼に浮かぶホンシアの姿を、アリスは鮮明に思い出す。そして彼女は掴んだ弾丸を目の高さで固定し、左手の剣を地面に突き立て、バールのようなものを狙撃銃の如く構える。
 形だけの、ホンシアの模倣。敬意からでは無く、記憶に突き動かされてアリスはその構えを取っていた。彼女はビリヤードのように、弾丸をバールのようなもので突き飛ばす。
 その射撃より一瞬早く、ルーシーの下にあった車の前部が跳ね上がった。車体の底部が盾となってルーシーを守り、アリスの放った弾丸がそこに命中した。

 次→「女王」 Part10

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