不思議の国の軟体鉱物

2017-05

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『Respective Tribute』 第9章「バールのようなもの」 Part4

 前→「バールのようなもの」 Part3

「……ふむ」
 アリスの言葉を聞き終えたルーシーは、腑に落ちない様子で呟いた。
「それが、君の答えか」
「そうよ。貴方の言うような敬意なんて、私には必要無い。もっと大事なものが、私の中にあるもの」
「なるほど……だが、そうか……ふふっ、そういう考えもあるか……」
 右手に覆われたルーシーの口から、笑い声が漏れ聞こえる。
「面白い、面白いぞ、アリス。私には無い考え方だ。それで果たして、力を発揮することが出来るかどうか」
「出来るわ。私は自分が感じた全てを、自分の力に変えてみせる」
 自信を込めた反論。今のアリスには、口に出した言葉通りのことが出来るような気がしていた。
「そうか、ならば試してみよう。君の考えが正しいのであれば、君は私を倒せるかも知れない。強い意志を、強いイメージを形成できるのであれば、魔力もそれ相応の強さで発生されるのだから」
 構えられるルーシーの手刀。バールのようなものを一層強く握るアリス。対峙する、両者。
「来るがいい」
 踏み込む一歩、薙ぎ払う一閃。今までのどんな打撃よりも速いアリスの一撃は、それでもルーシーに避けられる。
 間髪入れず、もう一撃。回避される。さらに一撃。届かない。
 次の一撃を打ち込むための、筋力と加速度の方向変換。その一瞬の隙を狙い、ルーシーの右手がバールのようなものを掴もうと伸びる。だが掴もうとする寸前、何かに感付いたその手が反射的に引かれ、ルーシーに隙が生じる。
 引っ込んだルーシーの手を追撃するように、力強いアリスの一撃が放たれる。ルーシーは突風のように急速な後退で一撃をかわし、アリスと距離を取った。
「驚いたな。まさか、そのバールを熱量増加で加熱していたとは。危うく火傷する所であった」
「貴女はさっき、私のバールのようなものを掴んだ。私は、ちゃんと覚えている」
 アリスはそう言って、再びバールのようなものを構える。対するルーシーは相変わらず微笑みを浮かべたまま、ゆっくりとアリスの左方へ回り込もうとしていた。
「それとこれはバールじゃないわ。バールのようなもの、よ」
「そうか」
 地面から僅かに浮いたまま、アリスを捉え続ける反時計回りの動き。その動きに合わせ、アリスも少しずつ左へと向きを変える。それと共に見えて来るのは、アリスが先ほど叩き落した自動車。
 自動車を間に挟んだ所で、ルーシーの動きが止まる。今まで散々使われた車による攻撃。アリスはそれを警戒しつつ、自動車を攻撃に使われないようにする方法を思案する。
「それにしても、面白い」
 車越しに、独り言のようなルーシーの声。
「いや、楽しいと言うべきか。そうだ、楽しいのだ。陰島とも神崎とも違う、完成されていない強さ。可能性の塊と形容して良いのか、ともかく一筋縄では行かない強さだ」
 話し始めたルーシーから注意を逸らさずに、アリスは次の一手を考え続ける。そして、彼女は至極単純なことに気付いた。自動車を武器に出来るのは、相手だけでは無いと。
「楽しいぞ、アリス」
 その言葉を合図にアリスは加速し、自動車に向けてバールのようなものを力一杯振り下ろした。
 振動破砕と加速度発生を込めた打撃。車体は破裂したように震え、衝撃で飛び散った破片がルーシーへと襲い掛かる。
「ははっ」
 笑い声と共に、ルーシーが高く舞い上がる。飛散する破片を避け、さらに加速度を増す。回避行動とは思えない飛翔。アリスは咄嗟に後を追って、飛び立つ。

 次→「バールのようなもの」 Part5

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