不思議の国の軟体鉱物

2017-07

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『Respective Tribute』 第10章「贈り物」 Part6

 前→「贈り物」 Part5

「あのね、奈々子」
 髪を触る手が止まる。アリスは奈々子の顔を見ずに、言葉を続ける。
「私、夢が出来たのかも知れないの」
 手の中にあるハンカチを見つめながら、自身の思い出に語りかけるように。
「その夢の途中で、もしかしたら、誰かを殺してしまうかも知れない」
 ルーシーのように。
「……もしかしたら、私が死んじゃうかも知れない」
 ローエングリンや、ホンシアのように。
「それでも叶えたい、叶えなくちゃいけない夢なの」
 きっと理解されない思い。だとしてもアリスは、感じて欲しいと願った。
 その夢こそが、今の自分自身であることに。
「奈々子は……応援してくれる?」
 そっと、奈々子の手がアリスの髪から離れる。そして、告げられる。
「応援なんて、出来るはずが無い。貴女が死んでしまうような夢なんて、絶対に」
 アリスは奈々子の顔を見ようと、顔を上げる。アリスの両目が悲しそうな奈々子の表情を捉えるも、彼女はすぐに顔を背け、ベッドから離れてしまう。そして窓際に立ち、外の風景に目を移した。
 そして、諦めたかのように、一言。
「でも……許してあげる」
 肯定でも否定でもない言葉。それはアリスにとって、優しすぎる言葉であった。
 自分が死ぬことを肯定せず、自分が夢を目指すことを否定せず。アリスを心配し、アリスを尊重する奈々子の妥協点。自分には勿体無いくらいの優しさだと、アリスには思えた。それはとても、嬉しいことだった。
 だからアリスは、それに応えようと決意する。奈々子が望まないことを、絶対に避けて見せると。
 それが意味するのは、自分が死ぬこと無くルーシーを倒すということ。夢に敗北することも、引き分けることも許されない。奈々子の優しさを裏切らないためには、完全な勝利を成し遂げるしかない。
 望むところだわ、とアリスは心の中で意気込む。元より、死ぬ気も負ける気も無かった。それが奈々子のためになるのならば、迷うことなど何も無い。
 そんな強い決心を沸き上がらせながら、アリスは奈々子の姿を見つめる。寂しそうな、後ろ姿を。
「奈々子……?」
 その背中が、生まれたばかりの決心を一瞬で鈍らせた。
 奈々子のために、夢を叶える。でもそれは本当に、奈々子のためになるのだろうか。それは本当に、奈々子の望みなのだろうか。

 次→「贈り物」 Part7

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